生まれてから本当に目まぐるしかった。
赤ちゃんの頃から記憶があるが
大人しいくせに妥協しない性格から
明るく乗り越えていくスタンスになった。
何度もクライシスがあった。
親との確執、
守ってくれるはずの彼氏たちの裏切り、
友達との喧嘩。
でも、昔から愛で包もうと
小さいなりにありったけやせ我慢してきた。
偽善者と言われたことは一度や二度ではない。
でも、わたしは変わらなかった。
下村奈緒美でありつづけた。
鉄芯が入っていると言われたこともある。
体を壊し、夜の仕事や自営をやめ、
お付き合いは両手のひらほどになった。
その中でも、以前の経済感覚と今では
ズレが生じてしまっている部分がある。
要はお金にシビアになってしまっているのだ。
でも、残ってくれた縁だから大事にしたい。
お金だとか、物だとかではなく、
心を届けるセンスが私にはあったはず。
それが下村だったはず。
前世は嫁ぐことで女優を捨て
母と、妻と、プリンセスを演じきった。
わたしはシモムラナオミを演じ切る。
抜けてるおバカだけど絶対に裏切らない、
律儀で義理堅い、わたしがわたしであるだけで
だれかの心の拠り所になれるはずだから。
変わらないことが人を救う、
そんなこともあるのだと。